複雑な問題に名称を付ける事に寄る問題の矮小化術

先日(2017/11/13)、NHKの『クローズアップ現代」(月曜~木曜:22時~22時半放送)にて、「ネットリンチ」という物についての話題が取り上げられ、放送内で「ネットリンチ問題」への対策として上げられた内容に対して、TwitterでITジャーナリストの三上洋氏が異論を唱えた事がニュース記事になった。

NHK「クロ現」唐澤弁護士のネットリンチ対策、三上洋氏が疑問だと別対策を披露
2017/11/16 20:55
NHKクローズアップ現代+(クロ現)」で紹介された「ネットリンチ対策」の方法について、ITジャーナリストの三上洋氏はツイッターに「炎上加速させちゃうことあるよね」と投稿した。
番組では「アカウント閉鎖」「削除依頼」「告訴」の3点をあげていた。どういう問題があり得るか、J-CASTニュースは三上氏に取材した。

 

ネットリンチに遭った際の対策」
2017年11月13日放送の「クロ現」では、ゲストに、ネットで5年以上嫌がらせを受けているという唐澤貴洋弁護士が出演した。ある人から誹謗中傷書き込みを削除してほしいとの依頼があり、ネット掲示板にその旨を書いたところ、今度は自身もネットリンチのターゲットにされた経験がある。
唐澤氏が「ネットリンチに遭った際の対策」としてあげたのは、(1)自分のアカウントをすぐに閉鎖する(2)削除依頼をする(3)告訴する――の3点だった。
(1)は「常に有効な方法ではありませんけれど」と前置きし、「ネットリンチはそのネタを常に探しているところがあります。アカウント上に載っている情報がさらなるリンチを呼びかねません」と説明。(2)は「ネットリンチの規模にもよりますが、小規模なら記事削除してもらうよう、サイト管理者に請求することも有効です」とし、(3)は「書き込み内容にもよりますが、違法性が強ければ逮捕を含めた厳格な警察の対応が現実に行われています」と順に説明した。
こうした対策についてITジャーナリストの三上洋氏は13日夜、「これ逆効果のような。炎上加速させちゃうことあるよね。。。」とツイート。疑問を示した。
三上氏は16日のJ-CASTニュースの取材に、3つの対策について「状況によりますが、ネットリンチエスカレートさせるおそれがあります」として、こう話す。

「『隠蔽』や『脅し』と捉えられかねない状況では、火に油を注ぐ行為」

「まず『アカウント閉鎖』をすると、公に意見を表明する場がなくなります。次に『削除依頼』はイタチごっこになりがちで、ただ削除しても同じ内容が繰り返し書かれていきます。削除したい情報があるのだと加害者側に伝えることにもなり、弱点をさらすことになりますので、何もしない場合よりも炎上が加速するおそれがあるのです。デマであれば長期的には削除依頼をすべきですが、その際もなぜ削除するかを説明する必要があります。

『告訴』については、対決姿勢を示すことになります。生活に支障が生じないよう、都道府県警のサイバー犯罪対策課などに相談するのは重要です。一方、いわれがなくてもリンチされている側に疑惑がもたれた状態では、告訴する旨を公にした場合『脅し』と捉えられ、反感を買ってしまいます」

こうしたことから「『隠蔽』や『脅し』と捉えられかねない状況では、火に油を注ぐ行為になります」と言う。一方「デマであれば長期的には削除依頼をすべきですが、その際もなぜ削除するかを説明する必要があります」とも話している。
では、どう対策を取るべきか。三上氏はこう話す。

「情報公開です。デマが流れ誹謗中傷を受けたら、SNSやメディアを通じて『自分はこういう者で、こういう状況に置かれているが、この情報は間違っている』と公にアナウンスすることです。難しければ匿名のブログでもいいです。個人でできなければ弁護士に依頼し、正しい情報を発信してもらいます」

「クロ現」では、お笑い芸人・スマイリーキクチさんも出演。ネットに書かれた虚偽情報によって殺人犯扱いされ、誹謗中傷を受け続けた。現在も殺害予告が届くことがあるという。実体験にもとづき、キクチさんは「まず冷静になる気持ちで投稿を集める。嫌がらせの電話などは録音する。警察に行く前に、ネットの捜査ができる刑事さんがいるかを尋ね、日時を決めて行く。そうすると捜査してくださる可能性は高いです」と述べていた。
(引用元:J-CASTニュース

先ず、件の番組を観て感じた事だが、問題を矮小化していると感じた。

わいしょうか【矮小化】
(名)スル
こぢんまりとすること。小さくすること。「問題を-する」

(引用元:大辞林 第三版)

そもそも、「番組内で紹介していたネットリンチの事例が雑」というのがこの番組の率直な感想だ。

ゲストにタレントのスマイリーキクチ氏や、弁護士の唐澤貴洋氏等を招き、番組内ではまとめブログ(アフィブログ)「オレ的ゲーム速報@刃」の管理人のjin115へのインタビューの内容を流していた。

しかし、その何れもが「ネットリンチ」の事例として語るには何処かズレているという印象を受けざるを得なかった。

スマイリーキクチ氏の事例
スマイリーキクチ氏は、元々他の人とコンビを組んでお笑い芸人として活動していたが、互いの方向性の違いからコンビを解散し、ピン(一人)芸人として活動していく事になった。
ピン芸人として活動する様になったスマイリーキクチは乱暴な口調と煽る様な芸風で、視聴者からの反感という形で知名度を上げていく。しかし、知名度が上がると同時に「元ヤンキー」であった過去が徐々に明るみに出る形となった。
スマイリーキクチ氏が過去にヤンキーとして活動していた場所が良く無かった。
その地域では、スマイリーキクチ氏がヤンキーとして活動していた頃に一人の女子高生が惨殺されており、その事件には末端まで数に入れれば数十人のヤンキーが関わっていたとの記録が存在した。
更に、その事件に関与した人物のリストの中にスマイリーキクチの本名と同姓同名の人物が存在した事から、その地区出身の元ヤンキーという事を謳い文句にしていたスマイリーキクチ氏は、その事件に関与していたのではないかとネット上で疑惑が持たれ、それが広まり「殺人事件に関与した人物」と認識される様になった。

②唐澤貴洋氏の事例
2ちゃんねるのなんでも実況J(ジュピター)板(以下なんJ)にて「長谷川亮太」という人物が八神太一というハンドルネーム(コテハン)で投稿を始め、約3年に渡りほぼ毎日煽りや中傷を含めた自分語りを繰り返すことでなんJの数多くの利用者(なんJ民)から反感を持たれる結果となった。
この長谷川亮太という人物が、自分語り等の際に身の回りに関する断片的な情報も書いていた事から、なんJ民達の積もりに積もったヘイトが爆発し住所と本名を特定されるに至り、住所と氏名を特定された長谷川亮太は、弁護士である唐澤貴洋に依頼した。
依頼を受けた唐澤貴洋は、削除要請や、長谷川亮太の住所、氏名を投稿した相手への開示請求を行ったが、「削除要請を行うためのスレの立て方が解らない」「開示請求を行うレス番号を間違えて請求する」等のポンコツぶりを見せた事から、一時は「長谷川亮太に巻き込まれた可哀想な弁護士」と称されていた。
しかし、2012年4月下旬にまとめWikiの管理人に削除を要求したり、長谷川亮太を見捨てるかのような行動を行い、2012年6月以降からは、自身に対する誹謗中傷と言えないような茶化すレスまでも無差別に開示請求(無差別開示)を数回に渡って繰り返したことで反感が高まり、戸籍から親族関係が特定され、先祖の墓に落書きされる等、なんJ民の玩具にされる様になった。

③jin115の事例 
アフィリエイトのために、煽り記事、明らかなデマ情報記事を多数書き続けていたために叩かれる様になった。

という、それぞれがそれぞれに、叩かれる様になるには叩かれる様になるだけの原因が有ったと言える。

 

①の「スマイリーキクチ氏の事例」の場合は…。
原因:乱暴な口調と煽る様な芸風等の他者から良くないイメージを芸風で知名度を上げた。
結果:元ヤンキーという過去が明るみに出る事になった
その後の事は貰い事故と言わざるを得ない部分が有るが、この、原因となる行動をしていなければ元ヤンキーという過去が明るみになる事も無く、それ以降の貰い事故的な事態も発生しなかったのではないだろうか?

②の「唐澤貴洋氏の事例」の場合は…。

原因:当初は「長谷川亮太に巻き込まれた可哀相な弁護士」と認識されていたのにまとめWikiに削除要請を出したり、依頼人であった人物(長谷川亮太)を見捨てる行動を取った。

結果:なんJ民に親族関係や先祖の墓の場所等が特定され玩具にされる様になった。

③の「jin115の事例」の場合は…。

言わずもがなである。

Twitterでは、放送内容に対して、下記の様な反応が有った。 

結局、どの事例にしてもそうだが、それぞれ本人の言動に何らかの問題が有るが故に引き起こされた事態と言わざるを得ない。

それらの、自身の言動の問題点については言及せずに「私はネットリンチを受けています」等と言うのは、「加害者が(原因を振り返る事無く)被害者になっている」「因果関係を考えず、結果だけをネットリンチという言葉で言い表す事で問題を矮小化させている」と言わざるを得ないのではないだろうか。

名無しの写真家は、問題の因果関係(原因)を考えずに結果だけを「ネットリンチ」という言葉で表して「自分達は被害者だ」と主張する"被害者面をした加害者"さん達は自らの行いを胸に手を当てて良く考えた方が良いのではないかと思います。

 

名無しの写真家 拝名無しの写真家 拝