米朝首脳会談は何をもたらすのか?

2018年6月12日、朝鮮戦争朝鮮半島大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)の二つに分断されて以来初めての、米朝首脳会談が行われた。

テレビでもネットでも、散々ニュースになっているのだから知らない人はいないと思うが、朝鮮半島の分断の経緯については下記の記事に書いたので、知らない人はそちらを読んで頂きたい。

その上で、この度行われた米朝首脳会談が一体何をもたらすのかという事を考えた。

先ず、結果からはっきり言おう。

米朝首脳会談は、世界に何ももたらす事は無い」だろう。

強いていうならば、日本に於いては安倍政権の支持率が多少下がるぐらいの結果にはなるかも知れないが。朝鮮戦争後の歴史上初の米朝首脳会談は、北朝鮮側…金正恩側の圧勝だったと言って良い。

先ず、今回の米朝首脳会談に至った経緯を整理してみよう。

アメリカの大統領がバラク・オバマだった頃。オバマ大統領は日本寄りな所が有り、アメリカは日本寄りな政策を打ち立てていた。中国や韓国・朝鮮半島の動きを牽制し、日本と共にあろうとして北朝鮮に対しても経済制裁を行う動き等がそれだ。その経済制裁は、アメリカの大統領がドナルド・トランプに代わってからも引き継がれていた。

しかし、トランプ大統領は日本寄りではない。「アメリカ・ファーストアメリカ至上主義)」であり、その観点からすれば日本寄りな政策を行う事はアメリカの経済発展の障害にしかならないと考えている所があった。

日本寄りではない大統領に代わったタイミングだからこそ、金正恩にはチャンスに見えたのだろう。

オバマ政権時代から続く経済制裁の緩和を狙うため、金正恩は一つのパフォーマンスをした。

先ず前提として、北朝鮮は既に核兵器の開発は終えているのだろうと考えられる。

その上で、核兵器を完成させ終えた事で役目を果たし終えた核兵器開発施設を廃棄する事で、北朝鮮は平和路線に転向したかの様に見せかけた。

この、見せかけの平和路線への転向というパフォーマンスを以って、韓国の大統領の心を掴み、2018年4月27日には韓国の大統領との間で南北首脳会談を行った。

北朝鮮の目的は

  1. 金正恩体制が世界に保証される事
  2. 韓国に駐留する米軍(在韓米軍)の韓国からの撤退
  3. 周辺諸国からの北朝鮮に対する経済制裁の緩和
  4. 北朝鮮を巡る外交問題に於いて日本の影響力を低下させる

の四つだ。

前述の南北首脳会談で、韓国の大統領と金正恩は共同声明を発表した。

その共同声明には「北朝鮮から核を廃棄する」という文は無く、「核無き朝鮮半島を目指す」と記載されていた。

朝鮮半島から核を無くす」という定義は解釈の仕方に寄っては、「アメリカは核保有国である、よって、米軍が駐留しているという事は北朝鮮から核を廃絶出来ていないと言える」と主張できる。

つまり、「朝鮮半島から核の廃絶を目指す」という名目で韓国から米軍を撤退させる事が出来る様になる。

もしもアメリカが、韓国から米軍を撤退させなければ、撤退させなかった事を理由に北朝鮮は掌返しが出来る様になる。

南北首脳会談でそういう状態を作り出した上での米朝首脳会談という流れだ。

米朝首脳会談で出された共同声明でも「北朝鮮から核を廃絶する」という文は無かった。代わりに「朝鮮半島から核を無くす」という南北首脳会談と変わらない宣言が出されただけだった。

自民・石破茂元幹事長「何も譲っていないのに金正恩委員長は体制保証を取り付けた」

2018.6.13 22:42

自民党石破茂元幹事長は13日、東京都内で開かれたトークイベントで、12日にトランプ米大統領と会談した北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長について「何も譲っていないのに、あの恐ろしい体制保証を取り付けた。いっぱい得たものはある」と述べた。

在韓米軍撤退を示唆したトランプ氏に対しても「『朝鮮半島にいる(米軍人の)息子や娘、旦那が帰ってくるよ』とのメッセージになり国内的にいい数字を得た」と語った。

一方、トランプ氏が米韓合同軍事演習の中止に言及したことについては「軍隊は常に訓練しないと能力を発揮できない。日本の安全保障にとってプラスになることは何もない」と述べた。

(引用元:産経新聞

厳しい見方だが、この記事の通りだ。

韓国に駐留する米軍の兵士には家族が居る。

韓国から在韓米軍を撤退させたい金正恩と、在韓米軍兵の家族たちに向けて在韓米軍の撤退を示唆する事で国内での支持率を上げようと狙ったトランプ大統領メリットが合致した

トランプ大統領は本来は実業家…ビジネスマンだ。自分に利になると判断出来れば北朝鮮すら取引相手になるのだろう。何処までもビジネスライクな考え方だと言える。

安倍首相は、北朝鮮との外交に於いて拉致問題の解決を図りたい狙いが有る。

拉致問題の解決は、言ってしまえば"情(感情)"の問題だ。

ビジネスライクに物事を考えるトランプ大統領情に訴えかけて事態を動かして貰う事を考える安倍首相この二人の温度差を見逃さず、トランプ政権の間にビジネス的に外交問題を動かしてしまおうと考えたのだとすれば、金正恩は相当なやり手だと言える。

そして、この結果に寄って自民党内部からも安倍首相に対する批判の声が上がり始めている。

安倍政権はネット上では支持率が高い…が、世の中はネットだけが全てではない。

今回の米朝首脳会談の結果を受けて、安倍内閣の支持率は僅かだが下がるだろう。

 

トランプ大統領は帰国後早速、米韓合同軍事演習中止の意志を発表した。

8月の米韓合同軍事演習、中止へ…米報道

2018年06月14日 13時02分

米CNNなど複数の米メディアは13日、トランプ政権が8月に予定されている米韓合同軍事演習を中止する方針だと報じた。トランプ大統領が12日の米朝首脳会談後の記者会見で、米韓合同軍事演習の中止検討を表明したことを受けた対応としている。

8月に予定される合同軍事演習は定例の「乙支ウルチフリーダム・ガーディアン」だ。報道によると、米政府高官は中止は14日にも発表される見通しと話している。この演習はコンピューターによる机上演習が中心で、朝鮮半島有事の全面戦争を含む複数のシナリオを基に、米韓両軍の部隊運用や指揮命令系統を確認している。

トランプ政権としては、早々に演習中止の発表に踏み切り、北朝鮮金正恩キムジョンウン朝鮮労働党委員長に米側の本気度を示すことで、非核化への動きを促す狙いがあるとみられる。

(引用元:読売新聞

北朝鮮がどう考えるかは解らないが、これに見合う対応をが有るとすれば「既に内々に廃棄が決定していた核兵器開発施設を一つ、さも米朝首脳会談後に廃棄が決定したかの様に見せかけ廃棄する」だけで済むだろう。

 

名無しの写真家 拝名無しの写真家 拝