枝葉の上で踊る虫 -『けものフレンズ』騒動について-

去年の今頃は、まだこのブログを開設していなかったので、この騒動については言及した事が無かったのだが…。

去年の今頃、『けものフレンズ』というアニメの監督のたつきという人(以下、「たつき監督」と呼称)が、続編製作にあたって降板させられたという事をTwitterでツイートして騒動になった事件が有った。

そのツイートによって、『けものフレンズ』の製作委員会に名を連ねていたKADOKAWA(旧:角川書店)が非難の矛先となった。理由は、たつき監督を降板させたのがKADOKAWAの意向だと考えられているからだ。

これについて、たつき監督が「KADOKAWAの意向で降板させられた」と書いていたかどうかについては、ツイートを探してくる事が出来なかったので降板がKADOKAWAの意向か否かについては真偽不明という見方をしている者からの意見として、この先の話については書かせてもらう。

この騒動から約一年、再びたつき監督が爆弾を投下したとネット上で話題になっている。

その爆弾がこちらだ。 

先ず、当記事の著者である名無しの写真家の立ち位置を述べておく。

情勢的に見れば、これから書く意見はKADOKAWA側の擁護と読み取る人がいると思う。

なので敢えて先に言っておくが、名無しの写真家としては、この騒動に関して「どちらの味方もするつもりがない」という立ち位置だ。

 

その上で、今回の騒動について、幾つかの層<レイヤー>に分けて話をさせて貰おうと思う。

 

①製作委員会 -本当にKADOKAWAの意向なのか?-

先ず、最近のアニメは大抵、色んな企業が共同して結成される「製作委員会」という形の組織によって企画・製作される。

けものフレンズ』も勿論、製作委員会によって企画・製作されている。

KADOKAWAは、その製作委員会に名を連ねている一社でしかない。

昨年の騒動時、たつき監督は「KADOKAWAの意向で降板させられた」という旨のツイートをしていたという話だが、そのツイートについては見付けてくる事が出来なかった。しかし、そういうツイートをしていたという情報が広がった事から、多くの人がKADOKAWAが悪いという認識でいるのは事実だ。

仮にたつき監督がそういうツイートをしていたとして、本当にそれがKADOKAWAの意向なのか否かについては、製作委員会の内部事情を把握できている訳ではないのでどちらとも言えない。

「実際に降板がKADOKAWAの意向だった場合」も考えられるし、たつき監督がKADOKAWAの意向で降板させられたと思い込んでいる場合」も考えられる。

要するに、この騒動についてどちら側について言及している人にも言える事だが「先ず、本当にKADOKAWAの意向での降板なのか否かが定かではない所から、各自の思い込みで騒動が始まっている」という状態にある。

 

KADOKAWAの火消し -KADOKAWAの悪手-

①で述べた様に「本当にKADOKAWAの意向での降板なのか否かが定かではない」状態で始まった昨年の騒動だが、KADOKAWAが匿名掲示板等で工作員を導入し騒動の火消しを行っていたという事実は存在する。

それについては様々なアフィリエイトブログ等が記事を書いているので、気になる人はそれらを見て欲しい。

この火消しについては、どういう意図で行われた物だとしてもKADOKAWA側の悪手と言わざるを得ないだろう。

 

③今年の爆弾投下 -たつき監督の悪手-

KADOKAWAの火消しが判明した後、たつき監督側もKADOKAWA側も、この騒動については沈黙した。そして、約一年が過ぎた先日、この記事の冒頭で紹介しているたつき監督のツイートにより騒動が再燃した。

冒頭で紹介しているツイートは、金曜日の20時過ぎ、しかも三連休前という一般的な企業なら社員が退勤し連休明けまで対応が出来ない時間に行われた。

これについて、たつき監督支持の人は「たつき監督は戦い方が上手い」「たつき監督は頭が良い」といった評価をしている。

しかし、これが本当に「上手い戦い方か」「頭の良い戦い方か」というと記事主としては聊か首をかしげる

この騒動は、①で述べた様に「本当にKADOKAWAの意向での降板なのか否か定かではない」という所から始まっていて、それについては、一年経った今でも明確に明かされていない。これは、問題の根本的な部分が全く明かされていない状態だ。

根本的な部分が全く明かされていない所に、たつき監督側は、新たに枝葉部分の出来事を燃料として投下した。これが、一年前にはたつき監督側だった人間がたつき監督に疑念を抱きKADOKAWA側支持に回ると言った事態を一部で引き起こしている。

根本的な点での解決を図りたいならば、時系列の整理のために互いに法的機関を入れて話し合いをする等の手段もある。

たつき監督の戦い方は、自分の支持者を煽動し事を大きくして相手に自分の要求を呑ませようとしているだけという見方もでき、私から見ると悪手だなと言わざるを得ない。

 

KADOKAWAの体質 -KADOKAWAを潰せるか?-

KADOKAWAは作り手を冷遇する会社だから、過去にもこんな事例が」と、この騒動に合わせてKADOKAWAの過去の作り手冷遇の事例を挙げている人がいる。

それらの事例を見ると、確かに、KADOKAWAが作り手を冷遇する体質である事は否めないだろう。

だが、それらと今回の事例を混ぜて話すのは如何な物かと思う。

「それはそれ、これはこれ」ではないだろうか。

騒動に関する意見を全体としてみると、たつき監督=正義、角川=悪という考えで騒動を見ている人が多数派である様に思える(今回のたつき監督の悪手でたつき監督に疑念を抱き、KADOKAWA支持に回った事例も幾つか見受けられるが)。

 

たつき監督=正義、角川=悪という二元論に酔ってKADOKAWAを攻撃するのは確かに気持ちいいだろう。

流れとしてKADOKAWAは潰すべきだ」という声が上がっているが、KADOKAWAは様々な出版社を取り込み拡大している。今や、大抵のライトノベルレーベルはKADOKAWAの傘下だし、その上電子書籍分野にまで進出している。大手動画サイトのニコニコ動画KADOKAWAの傘下だ。

KADOKAWAは潰すべきだ」と声を上げている人達は、これから先の人生、「一切KADOKAWA系列の書籍を買わない」「一切、ニコニコ動画を使わない」といった人生を送るつもりだろうか?

そんな人生を送れる人がいるとは考えられない。

言ってしまえば、KADOKAWAは巨大企業だ。潰そうと思って簡単に潰せる企業ではない。KADOKAWAは潰すべきだ」と言っている人のどれだけが、本気でKADOKAWAを潰す事が出来ると考えているだろうか?

どれだけ叩いても潰れる事が無い、潰れる気配を全く見せない、そういう対象は群衆心理では「叩き易い対象」と認識される事が多いらしい。叩いても潰れる事が無い、潰れる気配が無いからどれだけでも自分の中の怒りをぶつけられる、サンドバックとして最高なのだ。

KADOKAWAは潰すべきだ」と言っている人達こそ、KADOKAWAはこの程度の騒動では潰れない事を一番理解していて、叩き易い事が解っているから角川=悪という事にして」"正義マンごっこ"に興じているだけなのだろう。

 

結論

結論を言うと、この騒動は、根本の部分での解決を図るならたつき監督側と製作委員会側が双方とも弁護士を立てて訴訟なり弁護士同士の話し合いを行うのが筋だろう。

その事が解っているのか解っていないのかは解らないが、根本から離れた「枝葉の上で踊る虫」達のなんと多い事か。

 

と考える名無しの写真家であった。

名無しの写真家 拝名無しの写真家 拝