イオングループ VS 「週刊文春」
年の初めに、ぬまきちという人が2017年の11月~12月にかけて出版業界で起こった出来事についてツイートしていた。
この、ツイートしていた人物がそもそもある種の思想に偏っている傾向が有る様で、ブログ主としては、そのツイート内容に気色悪い物を感じずにはいられなかったのだが。
面白い事をツイートしていたのでまとめておこうと考えた。
11月書籍雑誌の推定販売金額は1069億円(前年度比:-7.8%)。書籍515億(-3.1%)、雑誌554億円(-11.8%)。月刊誌457億円(-12.5%)、週刊誌97億円(-8.2%)。雑誌は販売額ベースで4ヶ月連続ふた桁マイナス、部数ベースで8ヶ月連続マイナス。
— ぬまきち@SBD2好評発売中 (@obenkyounuma) 2:12 - 2018年1月3日
そんな中、返品率も同じく厳しい状況で、返品率は書籍40.5%、雑誌41.7%。雑誌の返品率40%超えはすでに11ヶ月連続で、もう雑誌は完全に息をしていない状況。
— ぬまきち@SBD2好評発売中 (@obenkyounuma) 2:15 - 2018年1月3日
この辺りの、雑誌の売り上げ状況や返品率については、この人物のツイートを見ていると本音では「どうでもいい」と思っている様に見える。
11月までの書籍雑誌推定販売金額は1兆2557億円(前年比-6.5%)、12月がこのまま推移すると予想すれば17年度は1兆3757億円前後と予測。そして、同じようにこのままの下落傾向であれば来年度は1兆3000億円を下回る予想も。
— ぬまきち@SBD2好評発売中 (@obenkyounuma) 2:23 - 2018年1月3日
取次の状況も苦しい。日販連結中間決算は売上高2825億円(前年比-4.9%)、トーハン連結中間決算は売上高2090億円(前年比-6.2%)。教科書主体の日教販の決算を見るに売上高273億円(前年比-0.1%)で、手堅いはずの教科書ビジネスにも先が見えない状況。
— ぬまきち@SBD2好評発売中 (@obenkyounuma) 2:29 - 2018年1月3日
大手書店の決算では、紀伊國屋の決算は売上高1033億円(前年比+2.4%)。営業利益は13億円。数字上は堅調だが、大型店の出店と閉店でバランスが取れておらず、メインバンクと確執の噂あり。有隣堂の決算は売上高505億円(前年比+2.4%)。書籍雑誌売上は224億円(-3.4%)ながら、雑貨で赤字を埋めた形。
— ぬまきち@SBD2好評発売中 (@obenkyounuma) 2:35 - 2018年1月3日
実際、このツイートを行った人物が上記の数字部分については「どうでもいい」と思っているからだろうか、文体が淡々としていて感情が乗っていない印象が有る。
それとは逆に、ここからのツイートには、このツイートを行った人物の感情が乗っている。
おそらく、このツイートを行った人物が言いたかったのは、ここからの話なのだろう。
最後に一つ気になる記事。週刊文春がイオンの偽装米ついて書いた記事の訴訟で裁判長は「訴訟を起こして言論や表現を委縮させるのではなく、良質の言論で対抗することで論争を深めることが望まれる」と異例の言及あり、という話。
— ぬまきち@SBD2好評発売中 (@obenkyounuma) 2:42 - 2018年1月3日
これは、週刊文春のイオン偽装米特集記事が掲載された号が、イオン系スーパー、ショッピングモール、系列書店(未来屋書店)から撤去され販売されなかったことに対してのこと。
— ぬまきち@SBD2好評発売中 (@obenkyounuma) 2:45 - 2018年1月3日
上記のツイートに書かれている出来事についてせつめいが不足している感があるので、この記事の中で時系列を踏まえて説明しておこう。
事は2013年10月に起こった。
2013年10月に発売された「週刊文春」の10月17日号に「『中国猛毒米』擬装イオンの大罪を暴く」「弁当、おにぎり1500万食」という見出しの記事が載った。
「米穀商社がイオングループとの米の取引の際に、イオングループ側から米の値段を安くしてくれと値切られたために、イオングループ側の希望する値段で米を販売するために中国産米などを国産米として擬装した。」「産地が偽装された米をイオンが購入し、その米で製造した弁当やおにぎり等を販売していた。」という内容の記事だ。
この記事に於いて批判されたイオンは、イオングループの系列店舗でその週の「週刊文春」の取り扱いを停止し撤去すると言う行動に出た。
その上で、この記事がイオングループに対する名誉棄損であるとして「週刊文春」に対して訴訟を起こしたという流れだ。
この裁判以前に千葉市の要請を受けて他コンビニが全て拒絶したにも関わらず成人向け雑誌撤去を行ったのと合わせてイオングループは表現問題に対して、無頓着というよりは積極的に問題があると言える行動を通して行っていることが明らかになって来ていると言える。
— ぬまきち@SBD2好評発売中 (@obenkyounuma) 2:46 - 2018年1月3日
といういことで、今月の出版ニュースまとめはここまで。他に相次ぐ地方中小書店の閉店による組合の撤退や解散のニュースも細々とありますが、気が滅入るので・・・
— ぬまきち@SBD2好評発売中 (@obenkyounuma) 2:47 - 2018年1月3日
このツイート主は一つ、大きな認識間違いをしている。
それは、このツイート主は
の順番に事態が発生していると認識しているという点だ。
実際は逆で
の順番だ。
イオングループが「週刊文春」に対して訴訟を起こしたのが2013年10月16日、この訴訟の一審判決(東京地裁)が出たのが2016年12月17日。
その後、イオングループ側と「週刊文春」側の両方が控訴し、控訴審判決(東京高裁)が出たのが2017年11月22日と言う流れだ。
イオングループ側は慰謝料や損害賠償等、総額1億6500万円の支払いを「週刊文春」側に求め、一審判決は2500万円の支払いを「週刊文春」に命じる内容だった。
これが、控訴審で一転する。
一審は「記事に真実でない部分がある」として、イオンが名誉回復に費やした広告料等を損害と認定したが、控訴審判決は「記事の見出しは名誉を傷つけるが、本文には違法性がない」と認定し、名誉回復に費やした広告料部分を損害に認めず、支払額を110万円に留めた。
その上で、控訴審を担当した裁判官は判決の際に「巨額の費用を請求するのは言論や表現を萎縮させ、好ましくない。訴訟を起こして言論や表現を委縮させるのではなく、良質の言論で対抗することで論争を深めることが望まれる」という異例のコメントを出したという話だ。
このツイートを行った人物の言いたい事は「イオングループは、表現問題に関しては無頓着と言うよりも、積極的に表現を規制しようとしている節がある」という事なのだろう。その点に関しては異論は無い。だが、事実を誤認した状態でその主張を行っている点に、このツイート主(ぬまきち氏)の思想の偏りを感じずにはいられない。
余談だが、 イオングループと「週刊文春」の訴訟については、イオングループ側の対応にネットでの炎上に対する三上洋氏のいう所の「下手な対処方法」に該当する行動をしていると感じた。
イオングループと「週刊文春」の訴訟については、まだまだ最高裁までもつれ込みそうなので最高裁がどの様な判決を出すか少し気になる所だ。これまでの判決にかかった時間から考えるならば、最高裁判決が出るのは今年(2018年)の10月~11月頃だろうか?
名無しの写真家 拝